2023.09.25 (Mon)
セル巻きのメガネ
丸いメガネを作っていると セル巻きにしてほしいと リクエストをされる方がいらっしゃいます。

セル巻きは 今では 特殊な技法で 薄いプラスチックのシートを丸めた形にして メガネのレンズ部のリムにかぶせることを言います。

メガネ業界の職人さんも だんだん高齢化してきて このセル巻きをする人は 数人しかいないし 薄いプラスチックのシートはプラスチックメーカーが生産するのをやめているので 在庫があるだけと言っています。
そんなわけで なかなか貴重な 技法だと思います。

また このプラスチックのシートは 熱に弱く 熱をかけると縮んでしまうやら 変形するやら 扱いが難しいのです。 それゆえ この技法は廃れてしまいました。

ときたま セル巻きをしてほしいというご希望があり そのセル巻きの職人さんに御願いするのですが 廃れ行くという事実とは反対に 忙しいいようで いまさらながら セル巻きの人気を感じます。

セル巻きをしてみると いつ見ても普通のメガネが よそ行のいい服を着たように かっこよく見えます。
ドレッシーというか 秋の風情に合っている 感じです。

やはり 手作り感のある 工芸品的なメガネになり 重みが違いますね。
9月下旬になって ようやく涼しくなってきました。今年は特に暑かったですね。
秋になって涼しくなると いつも 高田渡さんの「生活の柄」という曲を思い出します。
夏は外で寝ても 寒くなかったでも 秋になると冷気が出てきて 寝ていてもすぐ目が覚めてしまう。
そんな歌です。
2023.09.21 (Thu)
SDGs と メガネ
もう7年ほど前になりますが 一見風変わりな方と お話しすることがありました。
九州から東京まで歩いたとか ミカンを集荷する仕事をしているとか 聞いているとこの人はなにをする人かな?と 思ってしまうような人でした。
でも とても陽気で 話していても時間を忘れるような人でした。

ボロボロになったメガネ
その人から メガネが ガタガタになってしまったので メンテナンスを して欲しいとのことで 使っているメガネを送ってきました。
使ったメガネを見ると 汗と垢で レンズもコートが剥げていました。
とりあえず 洗浄して ネジを外し 各部品を 掃除しました。

メガネ自体は 傷はついているものの 壊れていませんでしたので また使えます。
この人は 街暮らしをしていたのですが 田舎に移住したそうです、
移住したところでは 廃油を集め その油を精製して チェンソーの燃料にしたりして 無駄にしないという生活をしていると ニュースで出ていました。

廃油を集めている様子
彼が 話すことで おもしろかったのは 「みんなが捨てているものを再利用して車を動かして、しかも排気ガスも植物性のものだから環境にもいいし、天ぷらのにおいがしてすごくおいしい。

車が通った後の『あ~お腹が減ったな』という気分にさせる画期的なものです。」と言う話でした。
また 彼のモットーは 自分の生活を自分でデザインする」。例えば、車をガソリンではなく、まさかの燃料で走らせようと試みるなど、ユニークな生き方をしています。

廃油を使って チェンソーを動かしている
最近よく使われている 「SDGs」という言葉があります。
SDGs(持続可能な開発目標)の 意味は難解で よくわかりませんが その一つに 「もったいない」という事もこの考えの一つになっているように思います。
一つのメガネを できるだけ長く使う事 修理できるなら 修理して 持続可能な限り メガネを使う。
このように 生活を工夫して 少しながら SDGsに貢献したいと思います。
先日 ピーターバラカンの 番組でC,C,R(クリーディンズクリアーウォーターリバイバル)の映画が公開されるそうです。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行った伝説的なライブを16mmフィルムで記録されていて 金庫に眠っていたのをデジタルで再現して 映画にしたと言うことです。 私がまだ中学生の頃 初めて聴いて 夢中になっていました。 アメリカの泥臭い曲で ストレートな感じで 若い人に響いたのでしょう。
一部がyoutubeに出ていたので ご覧ください。
「プラウドメアリー」です
2023.09.14 (Thu)
建築と メガネ
先日 建築設計をされている方とお話をしていましたら 白井晟一氏の事が話題に出てきました。

白井晟一氏という方は 昭和期の住宅において和風を手がけた代表的な建築家として知られています。


また 書道家としても 特異な存在です。
以前 白井氏がメガネのことで エッセイを書いているので 読んだんですが なかなか難解な文でした。

彼の設計をした 建築物は 木造の建物もあれば 石を使ったどっしりとした建物もあります。
どれも 華美な装飾はなく シンプルで無駄のないもので ミニマルな要素だけ残した建物のようです。
今回 お話をした建築設計士の方 メガネを探しているとのことで いろいろサンプルを見ていただきましたが もう一つ 決まらない様子でした。

しばらく 私の顔をご覧になって あなたがかけている そのメガネいいですね と 言われたので これですかと メガネを外して 見ていただきました。

叩きだしの12角形のメガネでした。 これですか と メガネをかけていただきましたが 思ったよりとても似合っています。

なにか 叩き出しの12角形のメガネって シンプルで 華美なモノがないので 先の白井晟一氏の 建築物のように 図太く あえて美しさを求めて作ったというより 単純な形に 金槌でたたき出したアトランダムな模様が 偶然に美しく見えてきます。

なるほど この方は 白井氏の 精神が 身体に染みこんでいるんだなあ と 思いました。

叩きだしのメガネは 図太く 丈夫で 無駄なモノを持たず 美しいと言う言葉からは離れているようですが そのありようが 縄文の無骨な美しさになっているのかなと 感じました。
もう8年ほど前のことですが バイオリンを製作する方と話をすることがありました。
チェロの話になり どんな曲が好きですかという問いかけに コダイの無伴奏チェロソナタっていいですよ と言われました。 聴いてみると 難解な重い曲でした しかし 頭から離れることができない曲でした。
ちょうど 白井氏の難解な文と 建築物を見ると よく似ているなあと思い思いました。
ハンガリー出身の コダイの曲を ハンガリー出身のヤーノシュ・シュタルケルが演奏しています。
2023.09.12 (Tue)
秋が来ると
あれだけ暑かった今年の夏も 9月も10日を過ぎると だんだん朝夕涼しくなります。

野の花も だんだん秋の花が咲き始め 知らぬ間に秋になります。
半袖だった服も 長袖になり 服の色も なんとなく 秋に応じた色になってくるような気がします。
昨年 秋にかけるメガネと言うことで 依頼されたメガネがあります。

グレーのボディに 薄いブラウンの色がポイントになるメガネです。

なんとなく 秋を意識した色で かけていても 落ち着いた色だと思います。

この色の配色は 東欧の風景が好きな方から依頼されたもので 東欧の国の事を知らない私には 未知のことでした。

でも 依頼された色をつけてみると なるほど なんかそんな気がするなあと 感じました。

今回 そのフレームを見て やはり この色のメガネを依頼された方がいらっしゃいました。
これから秋になるせいか この配色 派手ではないけれど クラッシックな色合いで 身に着けても馴染むようで秋にぴったりかもしれません。

朝夕が暗くなり 気分的には暗くなりがちですが 過ごしやすい気候になり 昔から言われる 芸術の秋 読書の秋 それに 食欲の秋となるのでしょう。
キツネノハナガサ
東欧は 旧ソビエトの影響が強く残っているようです。バルト三国のなかのラトビアという国に生まれて ツアーで海外コンサートをして デビューをして その後 ドイツに 亡命して バルト三国の演奏家を集め若い演奏家を育てる活動もしている ギドン・クレーメルという人がいます。
彼のバイオリンは 太い津軽三味線のように 心にズーンと効きます。

野の花も だんだん秋の花が咲き始め 知らぬ間に秋になります。
半袖だった服も 長袖になり 服の色も なんとなく 秋に応じた色になってくるような気がします。
昨年 秋にかけるメガネと言うことで 依頼されたメガネがあります。

グレーのボディに 薄いブラウンの色がポイントになるメガネです。

なんとなく 秋を意識した色で かけていても 落ち着いた色だと思います。

この色の配色は 東欧の風景が好きな方から依頼されたもので 東欧の国の事を知らない私には 未知のことでした。

でも 依頼された色をつけてみると なるほど なんかそんな気がするなあと 感じました。

今回 そのフレームを見て やはり この色のメガネを依頼された方がいらっしゃいました。
これから秋になるせいか この配色 派手ではないけれど クラッシックな色合いで 身に着けても馴染むようで秋にぴったりかもしれません。

朝夕が暗くなり 気分的には暗くなりがちですが 過ごしやすい気候になり 昔から言われる 芸術の秋 読書の秋 それに 食欲の秋となるのでしょう。

東欧は 旧ソビエトの影響が強く残っているようです。バルト三国のなかのラトビアという国に生まれて ツアーで海外コンサートをして デビューをして その後 ドイツに 亡命して バルト三国の演奏家を集め若い演奏家を育てる活動もしている ギドン・クレーメルという人がいます。
彼のバイオリンは 太い津軽三味線のように 心にズーンと効きます。
2023.09.08 (Fri)
単純化したメガネ
美術の彫刻で有名な作家で ロダンとか ミケランジェロとか いますが

肉体的というか 筋肉モリモリの 現実味のある作風です。

しかし そんな作品の中で ジャコメッティという作家の彫刻は 特異な存在です。
と言うのは 現実にある 肉体的な身体を削って削って 細い針金のような 形までにしてしまうという 作品です。 眼に見えるモノは肉体的な形であって 存在を追求していくと 針金のようになっていくと考えたのでしょうか? 作家の見る現実を作品にするとき 形は作家の世界で 変わっていくようです。

形はどんどん 単純化してどれも 針金のような存在になってしまします。
究極の形になるのでしょうか。
先日 メガネの問い合せがありました 近視が強いので できるだけレンズが重くないメガネにしたいとのことでした。度数の強いレンズは 厚くて重くなります。 それゆえ 重くてメガネがずれたり 見た目にも厚くて格好いいものではありません。

できるだけ軽く かけていても負担の少ないメガネを探しておられるようで 25mm径の丸メガネを 提案しました。

このメガネ 鼻の部分も一山で テンプルは1.2mmの細い線でできていて なんと言っても25mmという丸のメガネでは おそらく一番小さいレンズだろうと思います。

かけてみたら 眼の瞳の位置が ちょうどレンズの中心に来るので このメガネを選んでいただきました。
問題は こんな小さなレンズを加工してくれる メガネ屋さんがあるかという事でした。

レンズを挟んでいる中心の治具が25mm以上あって 削ると機械が壊れてしまいます
前にも書きましたが レンズを削り加工するとき レンズの中心にレンズを挟む治具が 25mmのレンズに対して大きすぎて うまく削れないので 普通のメガネ屋さんでは 困ってしまうようです。
しかし 中には こんな小さいレンズを加工してやろうという 強者のメガネ屋さんがいて 特殊な治具で加工してくれるのです。
これぞ 多分 一番小さな丸メガネではないでしょうか?
できてみたら レンズの厚さは 2.1mmという厚さで 横から見ても レンズの厚さは気になりませんし とても軽いようです。

数週間後 かけていてどうですか?と お聞きしたら 調子よいですとのこと。
メガネが小さすぎて 軽すぎるかなと心配していましたが その心配もなさそうで 良かったです。
今まで メガネをかけていて 重く 厚い レンズに悩まされていたのが ようやく 解放されたようです。
このメガネを依頼していただいた方は 私と同じ世代の方のようで ビートルズを聴きながら 若い時代を過ごしてきた方と思います。 そんな話をしていたとき 「nowhere man」という曲の話が出て 急に思い出せなくて 聴いてみると ラバーソウルというアルバムの ジョンの曲でした。
ジョンも若かったんだなあ 日本題名「ひとりぼっちのあいつ」 です。